553366 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

水 沢 有 美

水 沢 有 美

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第8回

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第8回
第一部:夏木陽介主演『青春とはなんだ』(7)
ドラムは誰だ~『青春とはなんだ』第32話「エレキで助けろ」篇~


 日本中がエレキ・ブームに沸いたのは、手元の資料に寄れば1965(昭和40)年8月以降のことのようです。確か映画『青春デンデケデケデケ』(1992年、大林宣彦監督)において主人公が、夏休みのある日、昼寝をしていて突然ラジオから聞こえてきたベンチャーズのエレキ・ギターの演奏の音にまさしく感電してエレキの虜になるというシーンがありました。日本中の若者を虜にしたエレキ・ブームはこの年の年末に加山雄三主演の<若大将シリーズ>の1本として『エレキの若大将』(12月19日公開)が公開されるということになりました。今回、取り上げる『青春とはなんだ』第32話「エレキで助けろ」(1966年7月10日放送)は、脚本:田中美樹、監督:松森健のものですが、東宝映画『エレキの若大将』から話の骨格は借りてきたものです。すなわち、お金に困った為、テレビの勝ち抜きのエレキ番組に出演して賞金を獲得するというシュチュエーションです。設定は違うにしてもどちらも交通事故が絡んでいるというのも似た印象を受けます。
 ちなみに、今回の楽屋落ち的楽しみとしては、「エレキバンド勝ち抜き合戦」の審査員として千葉泰樹(監修)、高瀬昌宏(監督)、須崎勝弥(脚本)、井出俊郎(脚本)という制作スタッフが登場していることです。とても音楽番組の審査員には見えないところがご愛嬌ですが、2度登場します。

 もうすぐ夏休みのある日、ラグビーは遠征合宿することになりますが、体育文化ホール建設のこともあり、遠征費用は却下されます。一方、クラスメートの父親がひき逃げ事故にあい死亡するという事故が起きています。寺田(矢野間啓治)や久保(木村豊幸)らは、合宿費用を算段するためエレキバンドを作り、何とかその演奏の謝礼金などを稼ごうとします。そして「エレキバンド勝ち抜き合戦」に出演することになります。
 では、今回のキャスティング・ボードを見てみましょう。

1枚目 夏木陽介
2枚目 藤山陽子
3枚目 豊浦美子、岡田可愛、大沢健三郎
4枚目 木村豊幸、矢野間啓治、関戸純方
5枚目 新門宏泰、木下陽夫、石黒高志、松浦忍
6枚目 仲村紘一、松田八十栄、水沢有美、遠山智英子、田中浩
7枚目 宇野晃司、越後憲三、渋谷英男、岸井好子
8枚目 二瓶正也、岩本弘司、中山豊
9枚目 野村明司、向井淳一郎、藤波洸子
10枚目 名古屋章、菅井きん
11枚目 藤木悠、十朱久雄

 サブの女生徒たちは、6枚目に登場。今回は水沢有美さんのほか松田八十栄さんと遠山智英子さんのお二人。水沢有美さんは、途中での順子の家「食堂やよい」に集まるシーン2回には不在でしたが、合計5つのシーンに登場します。以下、順に紹介していきましょう。なお、全体を40場面と数えました。

第1場面(#1)校門前。
登校して来る生徒たち。久保と寺田を呼び止める勝子(岡田可愛)ら女生徒五人(豊浦美子、水沢有美、松田八十栄、遠山智英子)。高校生活最後の夏休みに海水浴場に行こうと誘う勝子らだがラグビー部は遠征合宿があってダメだという。水沢有美さん扮する佑子のセリフは「ダメね。合宿じゃ」。

第2場面(#27)警察署の道場。
巡りめぐってエレキバンドの練習場をドラム担当となった警官の三瓶(二瓶正也)の計らいで警察署の道場で行うことになります。女生徒たち五人も応援に駆けつけます。そして、演奏にあわせて次長と一緒にモンキーダンスを踊る水沢さんたち。このとき演奏する楽曲は「夜空の星」。

第3場面(#29) エレキバンド勝ち抜き合戦会場。
ラグビー部キャプテンや五人の女生徒が応援に駆けつけています。水沢有美さんは、画面の構成上か女生徒では一人だけ第2列の男子生徒と並んでいます。ちなみにラガーズ(バンド名)の演奏は「若い明日」。ちなみに最後の第10週目に演奏するのは「貴様と俺」。

第4場面(#39)職員室。
エレキバンド勝ち抜き合戦10週勝ち抜きの賞金5万円を交通事故で父親が亡くなった高井(新門宏泰)に渡してほしいと野々村先生(夏木陽介)に持ってくる生徒たち。水沢有美さんを含む女生徒五人も一緒です。

第5場面(#40、最終シーン)。校門前。
再び登校する生徒たち。最初のシーンと同じような会話が交わされます。久保と寺田の立場とセリフが逆転しているのが趣向といえるでしょう。なお、このシーンで、ラグビー部の遠征合宿が中止となり山でのキャンプ合宿になったことが示されます。これが第34話「太陽と青春」の蓼科高原が舞台となり、水沢有美さん扮する佑子がとんでもない目に遇うのですが、それはまだ先の話というところで。

 ところで、ラガーズというバンドを作るのですが、ドラマーが下手で最初のメンバーが「お祭りの太鼓みたい」といわれて警察官の三瓶(二瓶正也)が担当することになります。しかし、捜査の関係上、最後のエレキバンド勝ち抜き合戦には出られなくなって1年生の藤井(大沢健三郎)に代わることになります。その際、三瓶さんの弟子で、師匠より上手くなっていると説明されるのです。それならば、最初から参加すればいいのではないかと思わされます。
なお、ご存知のように水沢有美さんは、実際の中学時代にバンドを組んでいてドラムを叩いていたということで、『これが青春だ』第18話「さらば故郷」(1967.3.19放送)、『でっかい青春』第30話「クビになった雷先生」(1968.5.26放送)と『飛び出せ!青春』第12話「ガラクタ楽団全員集合」(1972.5.14放送)では、ドラムを叩く役柄として出演しています。だから、三瓶さんが無理となった時に実は佑子がドラムを叩けるのがわかって参加するのではあれば、面白かったと思うのですが、水沢有美さんが、まだこの頃はドラムが叩けるとはスタッフは知らなかったのでしょうか。でも、映画『エレキの若大将』では、松本めぐみさんが、女性だけのバンドの中でドラマー役でしたので、そういう設定もありだったと思うのですが、どうなのでしょう。水沢有美さんのドラムを叩く姿をこの『青春とはなんだ』でも見てみたかった気がします。

脚本上の不都合については、この他、10組(10週)勝ち抜くには2ヵ月半かかることになり、夏合宿に間に合わないではないかという指摘は、宇留野仁一著『「青春とはなんだ」大全』でもされています。1週勝ち抜くごとに1万円の賞金という設定なので、当初の5万円必要というのであれば、5週勝ち抜きでやめておけばいいことになります。しかし、10万円の賞金を獲得して半分の5万円を交通基金に寄付するシーンはストーリー構成上必要だったのでしょう。

今回は、水沢有美さんが踊る中川先生(藤木悠)言うところのモンキーダンス(後のゴーゴー)姿が可愛かったです。ちなみにこの第32話の放送があった1966(昭和41)年7月には、ザ・ビートルズが来日公演(6月30日、日本武道館公演、7月1日テレビ放送)をしています。
では、次回は再び三人娘の一人として活躍する水沢有美さんが登場する第33話「風が見ていた」です。


© Rakuten Group, Inc.